■『職業としての学問』を徹底的に精査した労作

ヴェーバー『職業としての学問』の研究(完全版)

ヴェーバー『職業としての学問』の研究(完全版)

野粼敏郎『ヴェーバー『職業としての学問』の研究』晃洋書房

野粼敏郎様、ご恵存賜りありがとうございました。

 野粼先生の研究人生のなかで、おそらく主著になるであろうご労作であると思われます。粘り強い研究の末に、包括的な研究の成果を一書にまとめられましたことを、心よりお喜び申し上げます。
 あるべき研究者の像は、いわゆるプロテスタンティズムのように一つのことに専念するタイプではなく、今井弘道氏がいうような、批判的な市民であるというわけですね。専門化がすすむ学問において、自らの本分を信じて邁進するだけでなく、その学問の意味を批判的に問い返して、社会生活の場面においては市民として発言し行動する。このように制度のなかで埋没しないことが重要である、という主張は、まさに今日のリベラルにふさわしい立ち位置であると思いました。