■戦略家グナイゼナウ

橋爪大三郎『戦争の社会学光文社新書

橋爪大三郎さま、ご恵存賜りありがとうございました。

 貧乏な家庭に生まれたアウグスト・フォン・グナイゼナウ(1760-1831)は、軍人になり、アメリカ独立戦争にはイギリス軍として参加しました。帰国するとプロイセンの軍に加わります。
 グナイゼナウは、ナポレオンの作戦の特徴を研究します。
 ナポレオン軍の戦略は、敵の主力に、敵を上回る兵力を集中させて決戦を挑むというものでした。敵が崩れて撤退すると、そこを追撃して、立ち直れなくする。
 この戦略に対抗するためには、けっして決戦に応じない、その前に撤退する、というのがグナイゼナウの考え方でした。もっとも相手が退いたときには追撃を加える。これを繰り返していれば、決して負けない。軍事力は消耗しない。最終的には、ナポレオン軍のほうが消耗して、勝つことができるというわけですね。
 ワーテルローの戦い(1815)でも、こうしたグナイゼナウの采配が光りました。
 ベルギーのワーテルローでは、互角の戦いが続く中、それ以前に敗走したはずのプロイセン軍が、ふたたびナポレオン軍のまえに現われる。側面を突かれたナポレオン軍は総崩れになり、パリに戻ったナポレオンは退位しました。