■講演から生まれた読み応えのある二編

生きるための自由論 (河出ブックス)

生きるための自由論 (河出ブックス)

大澤真幸『生きるための自由論』河出ブックス、2010年

大澤真幸様、ご恵存賜りありがとうございました。

・ウェッブ論座/シノドス・ジャーナル等でも取り上げて紹介しましたが、とても面白く拝読しました。自由とは、自己の欲望を満たすことであるとして、でも、その欲望は、実は、他者の欲望を組み込んだものになっているとすれば、どうなるか。結局、他人の欲望を満たすことが、自分の欲望を満たすことになるとすれば、個人的な利害を追求することが、連帯的な利害を追求することに結びつく。それだけでない。私たちは、いったい、誰の欲望を満たそうとしているのか。それはみんなの欲望であるとして、みんなとは、誰が決めるものなのか。実は、誰もがその欲望にとって他者であって、言い換えれば、各個人は、だれでもない他者の欲望を組み込んでいるのではないか。
 そんなことを考え始めると、自由というのは、大変な問題になる。誰でもない他者の欲望まで満たさなければならないとすれば、そうしなければ自由になれないとすれば、どのような生き方が求められるのだろうか、と。