■アメリカのイスラム研究の現在

仮想戦争 〔イスラーム・イスラエル・アメリカの原理主義〕

仮想戦争 〔イスラーム・イスラエル・アメリカの原理主義〕

レザー・アスラン『仮想戦争』白須英子訳、藤原書店、2010年

・白須英子様、ご恵存賜りありがとうございました。

・著者のレザー・アスランは1972年生まれ。イラン革命のときに両親と共にアメリカに亡命したという。イスラムの「悲憤(grievance)」とはなにか。それを理解することから、国際関係ははじまるという。イスラムでは近代化とともに、アトム化された個人が「自由の不安」を抱くようになっている。その不安が悲憤になるとき、自身の帰属意識は「原理主義」へと向かうのだろう。しかし、原理主義的行動原理は、文明間の対立をもたらすのであって、アイデンティティの追求は戦争を解決しない。原理主義とは、コズミックな、宇宙論的な秩序が一定の文脈に担保されている世界を求める。だが、そのような宇宙は、近世の出現と共に崩壊していったのであって、求めるべきはコズミックではないような、文化の原理であり、したがってまた帰属意識なのであるが、それはどんな仕方で獲得されるのだろうか。重要なのは、帰属意識への希求が、戦争によってシンボリックに満たされることがないように、その代替となる文化を支援していく必要があるということ。