■逆説明責任という政治

自民党長期政権の政治経済学―利益誘導政治の自己矛盾

自民党長期政権の政治経済学―利益誘導政治の自己矛盾

斉藤淳『自民党長期政権の政治経済学』勁草書房、2010年

・斉藤淳様、ご恵存賜りありがとうございました。

・政治家や政党が、有権者からの支持を求めて互いに切磋琢磨するというのではなく、その反対に、有権者の側が、政権を握っている政治家や政党の利益誘導を求めて、互いに競争する。そのような状況をperverse accountabilityという。「逆説明責任」、あるいは説明責任の倒錯状態である。そのような状況が、自民党長期政権の下で生じていた。

・そのような「逆説明責任」を課す自民党の利益誘導は、どんな条件の下で可能だったのか。例えば、地域共同体や各種団体によって、互いに他の団体を監視できる場合には、そしてまた、報復戦略が有効な場合には、各利益団体は、とにかく自民党を支持しないと、マイナスの影響をこうむってしまう。ということは、地域社会が共同体主義的に形成されている場合には、また各団体が濃密なコミュニケーションをしている場合には、それだけ「逆説明責任」の可能性が生まれるということだろうか。