■資本主義の解剖

資本主義はどこへ向かうのか 内部化する市場と自由投資主義 (NHKブックス)

資本主義はどこへ向かうのか 内部化する市場と自由投資主義 (NHKブックス)

西部忠著『資本主義はどこへ向かうのか』NHKブックス

西部忠様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

さっそく読ませていただきました。すばらしい本だと思います! 西部先生のこれまでの、十数年間にわたるご研究が、この一冊に凝縮されています。ハイエク研究、地域通貨研究、貨幣論研究、市場の内部化や一般化などに関する、マルクス経済学を継承する研究、等々。そのエッセンスが緻密に論じられ、市場の新しい全体像を鮮やかに提起しています。渾身の一冊であり、これまでの西部先生の到達点を一気に公開したものになっています。

スタンスとしては、できるだけ市場を媒介にしない関係が望ましいとしながらも、地域通貨は、市場をさらに信頼関係の中に埋め込むという、新しいフェーズとして、大いに意義があるということでしょうか。そのヴィジョンは、これまでの資本主義論のなかでは論じられていない、まさにフロンティアの理念を持っていると思いました。

そして今回、とくに刺激を受けたのは、インターネットと貨幣の相同性です。自律分散型の情報装置であるということ、そして、パケットのような乗り物(媒介物)を利用して、形式的に操作可能な仕方で、さまざまな財や情報が流通するということ。こうしたアナロジーでもって、ネット社会における貨幣の意義について、あらためて考える機会を得ました。また議論できることを、楽しみにしています。