■政治思想、相関社会科学の収穫

政治の発見 第3巻 支える (政治の発見 第 3巻)

政治の発見 第3巻 支える (政治の発見 第 3巻)

斎藤純一編『政治の発見3 支える』風行社

斎藤純一様、五野井郁夫様、井上彰様、重田園江様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 風行社から刊行中の『政治の発見』シリーズ、第三巻は、とても読み応えあります。それにしても、相関社会科学出身者が、三名も加わっているのですね。

 考えさせられる論点がいろいろとあります。連帯というものが、企業中心ではなく、国家中心に再編されています。これまで連帯から排除されていた、非正規雇用の労働者が、包摂されるような連帯を実現するためには、国家が普遍的に雇用保険を提供する、そういう仕組みが必要になってきますね。すると「連帯」は、いったん、企業レベルでは衰退し、新たな集合的選択によって、再構築されなければならなくなりますね。いま求められているのは、「連帯の再編」であり、そのための意識的な掴み取り、ということになるでしょうか。

 もう一つ、芸術系の大学に入学するための条件は、あまり努力に依存せず、能力に依存する場合が多いので、あまりアファーマティヴに入学定員枠を広げすぎないほうがよい、という考え方について、考えてみます。このような考え方は、例えば、小論文や面接を課すような大学入試の場合も、同じように当てはまるかもしれませんね。

 でも私は、反対に、アファーマティヴな定員枠(低所得層の家庭に育った学生の枠)を、広げるべきではないか、と思っています。というのも、芸術系の特殊な学科試験や、小論文や面接試験では、親の影響を受けやすく、能力にも努力にも依存しない、家族資本や地域資本のようなものが、大きく作用しているように思われるからです。こういう資本の格差を是正して、機会の実質的な平等を図るためには、アファーマティヴな定員枠を広げてみてはどうでしょう。ここでポイントは、機会の平等という理念を、「能力」と「努力」という二つの基準で考えるのではなく、「能力(素質)」、「努力」および「家族・地域資本」という三つの観点から、制度的に考える、ということです。