■不可能な革命に身を乗り出す勇気

社会は絶えず夢を見ている

社会は絶えず夢を見ている

大澤真幸著『社会は絶えず夢を見ている』朝日出版社

大澤真幸様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 かなり興奮して読みました。重要なことが、ストレートに、しかもいろいろなネタの仕込みとともに語られています。思想的に、重要な本であると思います。

 特に、ルター、カルヴァンカトリックという三つの宗派の流れが、現在の福祉国家体制のパフォーマンスに、どのような影響を与えているのか、という分析です。北欧型の「普遍的な包摂」という理念について、思想的にあらためて検討すべきテーマを与えられました。とにもかくにも、シグルン・カールの研究を受けて、大澤先生が思想的にルター派の意義を解釈している点。先生の解釈から、さらにどこまで進むことができるのか。大いに思考をかきたてられました。

 もう一つは、革命の可能性についてです。現代において、革命の精神、あるいは革命の企ては、どのような歴史的意義を持ちうるのかについて、本書の記述は、可能な最善の論理を提示しているのではないか、と思いました。過去を書き換えることで、過去を救済する、という関心ですね。過去に救済されなかった魂はたくさんある。これらを誰が救済できるのかと言えば、それは真の革命家によってである、ということになる。まったく別の第三者の審級という観点から、いまのときを叩き出すように、歴史を解釈していく。そういう企てこそ、現代において可能な革命の本領ではないか、と納得しました。

 本書は、連続講義の第一弾ということですね。第二弾を、楽しみにしております。