■GNP指標の問題点

現代経済思想―サムエルソンからクルーグマンまで

現代経済思想―サムエルソンからクルーグマンまで


根井雅弘編『現代経済思想 サミュエルソンからクルーグマンまで』ミネルヴァ書房

根井雅弘様、藤田菜々子様、神野照敏様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

現代の経済思想の諸学説が、このようなテキストのかたちで広く読まれることは、とても意義深いことだと思います。冒険的な企画でありますが、これは重要な一歩であり、経済学史研究者たちは、こうしたアプローチの仕方で、現代的な、思想そのものをストレートに扱う研究へと、誘われるでしょう。

反対に言えば、現代の経済学者たちが歴史に名を残すとすれば、それは思想的な観点をもって研究に当たっている場合ではないか、と思いました。この点で、ガルブレイスのような経済学者は、今後、広く研究されるのではないでしょうか。

都留重人の研究業績として、GNP指標をさまざまな角度から検討し、また批判した点が、やはり重要だと思いました。生活の必要経費が高くなる、取引契約が複雑になりコストが上がる、無駄が制度化される、資源が枯渇したり環境が汚染されるコストを考慮していない、長期的な資源配分に無駄が生じる点を考慮していない、といった点です。こうした指摘はいずれも、経済思想の探究に向かう際の、導入的な議論になりますよね。この他にも、いろいろと勉強させていただきました。ありがとうございました。