■環境プラグマティズムは人間中心主義

応用哲学を学ぶ人のために

応用哲学を学ぶ人のために

戸田山和久/出口康夫編『応用哲学を学ぶ人のために』世界思想社

戸田山和久様、出口康夫様、蔵田伸雄様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 本書は、日本初の応用哲学の入門書である、と謳っています。さまざまな分野に、哲学が挑戦している、ということが、全体として鳥瞰できるようになっています。
 環境倫理という点で、プラグマティズムは、功利主義とは異なって、解決策の認識における真理の収斂説というものに、コミットメントしているのですね。環境問題を具体的に解決する場面で問われている事柄は、おそらくそのような哲学の有効性でしょう。蔵田論文は、最近の環境思想へのすぐれた導入になっています。結局、自然の内在的な価値というよりも、問題解決に必要な場面で考えれば、ある程度の人間中心主義は不可欠であり、そのような現実的立場から、環境問題にアプローチしたほうが、実効的であるというのは頷けます。この種の環境プラグマティストに問われているのは、哲学的なオリジナリティではなく、どんな環境政策を実際に支持し、また実効性を与えたのか、という、きわめて応用政策的なスタンスにあるのでしょう。その意味で、環境プラグマティズムは、環境運動論の意義を評価する方法論であるのかもしれません。