■国を愛してこそ、国の外部に感受性が広がっていく
- 作者: 大澤真幸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/06/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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大澤真幸様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
大澤社会学、ナショナリズムをめぐる最新の論文集です。
3.11大震災と福島の原発事故を受けて、諸外国政府は心温まる同情の念を示し、日本を支援してくれました。それはナショナリズムが可能にした、「外部の他者への感受性」であったのではないか。そうだとすれば、国家は、私たちの感受性の拡張装置として、実はすぐれたものである、ということになります。
興味深いのは、日本人の社会意識構造として、ナショナリズムの意識と言っても、外部に開かれていくものと、そうでないものがある、という指摘です。
第一のタイプとして、自国への愛着を通じて、外国人と積極的に交流する人たちがいます。常識的には、身内を愛する人は外部の人々を敵対視する傾向にあると考えられます。しかし、意識調査では、日本に強い愛着をもっている人たちは、海外の人たちとの交流に積極的です。
第二のタイプとして、自国へのプライドをもつがゆえに、外国人との交流に消極的な人たちがいます。自信の強い人、あるいは自分に自身がもてない場合でも、自国に自信をもつ人。そういう人たちは、あまり海外に対して開かれていかない傾向にあるようです。
国を愛するといっても、国に対して「愛着」をもつのか、それとも国に対して「プライド」をもつのか、という違いがあります。愛着というのは、自分の生活を肯定してくれるなにかですね。それに対してプライドというのは、自分の生活を肯定するなにかではなくて、自分の精神を奮い立たせるなにか、ですね。この違いは、海外に対する対応の違いとなって、さまざまなかたちでナショナリズムを駆動するのかもしれません。