■階級闘争を視軸にして『資本論』を読む

〈資本論〉入門

〈資本論〉入門

デヴィッド・ハーヴェイ『〈資本論〉入門』森田成哉、中村好孝訳、作品社

森田成哉様、中村好孝様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 『資本論』が読まれるなか、一つの決定的な入門書がでました。著者のハーヴェイは、新自由主義批判など、現代の経済社会の問題を深く分析している経済思想家です。そのハーヴェイによる、現代の資本主義を読み解くための、『資本論』講義です。
 入門的な本ではありますが、いっさいの妥協はありません。アメリカ人の、とりわけ若い学生や労働者たちにとって、現在、どんな論点が重要なのか。それは日本人の関心と、完全には重ならないかもしれません。ですが現代の社会問題との対峙のなかで、濃密な議論が続きます。
 日本人はこれまで、『資本論』の最初の部分、貨幣の物神性のところまでの人文的・哲学的な部分を重視して、そこに文学的な関心や、あるいは社会理論的な関心を持ち込んで、自由に読むという技芸を争ってきたところがあります。しかし本書は、この最初の部分を飛ばして、資本主義のもとでの「階級闘争」の問題に、ストレートに迫っていきます。
 ハーヴェイが重視しているのは、『資本論』のなかの「労働日」の章であり、これは、絶対的な剰余価値をめぐる階級闘争の問題に関係しています。また、これに関係しているのが「略奪による蓄積」であり、それは、資本主義の「本源的な蓄積」段階に限定されるものではなく、現代の資本主義過程においても生じていることが、問題視されています。
 訳者解説では、『資本論』を理解するための、さらなる文献案内も記されています。私も、自分なりに『資本論』をどう読むかについて、しばしば考えます。参考になる一冊です。