■あまりにも個人主義的な日本人

(日本人)

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橘玲『(日本人)』幻冬舎

橘玲様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

この本のタイトルは、「かっこにっぽんじん」と読むそうです。これまで日本人論は、戦後いろいろな形で論じられてきましたが、それらの多くは、ほとんど特殊日本的なものを指摘したのではなく、ある意味で普遍的な人間の本性を指摘したにすぎない、ということが、この10数年間のグローバリズム現象の中で、理解されてきました。本書はそうしたなかで、改めて日本人の特性とは何か、を問い返しています。
「世界価値観調査」というものがあります。それによれば、「あなたは進んで国のためにたたかいますか」という問いに対して、日本人は、15.1%しか「はい」と答える人がいません。国際比較では最低水準です。これに対して、スウェーデン人やフィンランド人は、80%程度の人々が「はい」と答えています。これはずいぶん違いますね。北欧社会のほうが、よっぽど愛国主義的な社会である、ともいえます。
同調査によれば、「日本人であることを誇りに感じるか」、という問いに対しても、日本人はあまり誇りを感じていない、という結果が示されます。日本人は57.4%、これに対して韓国人は88.5%の人々が、「自国民であることに誇りを感じている」ということです。
拙著『経済倫理=あなたは、なに主義?』では、イングルハートの分析を再構成して、まとまった仕方で紹介しました。本書ではこの拙著から、このイングルハートの分析を紹介している部分を、たくさん引用、参照していただきました。拙著を大いに利用していただき、光栄です。
イングルハートの分析から言えることは、日本人は国際比較において、とても世俗的で個人主義的であるということです。その特徴は、戦後の民主主義教育によって形成されたのかといえば、そうではなく、昔から日本人は個人主義的だった、というのが橘さんの主張です。あまりにも個人主義的なので、「空気」とか「水」というものがないと社会としてまとまらない。
よく日本人は「空気」を大切にする、と言われるけれども、空気がないと社会が存続できないくらい、他の国民と比べて個人主義的だ、というのが現実というわけです。このイメージは、従来の「日本人論」の主張と、ずいぶん異なりますね。従来の日本人論にだまされない視角が必要、ということが本書を通じてわかります。