■家庭で時間を節約、職場で時間を無駄にするアメリカ人
タイム・バインド(時間の板挟み状態) 働く母親のワークライフバランス―仕事・家庭・子どもをめぐる真実―
- 作者: アーリー・ラッセル・ホックシールド,坂口緑,中野聡子,両角道代
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2012/03/22
- メディア: 単行本
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アーリー・ラッセル・ホックシールド『タイム・バインド 働く母親のワークライフバランス』明石書店
坂口緑様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
本書によると、アメリカの「労働」者人口の45%は女性で、6歳から17歳の子を持つ母親のうち、74%が働いている。6歳以下の子供を持つ母親でも、59%が働いていて、1歳以下の乳児を持つ母親のうち、55%は、有給の仕事を持っている。また、その約半数は、フルタイムの勤務についている(ただしその場合、有給休暇をとっている可能性もあるでしょう)。
統計を見るかぎり、アメリカという国は、労働時間の最も長い国であり、第二位の日本よりも二週間も長い。そうした過剰労働の現実を、本書は、「アメルコ」という会社の従業員に対するインタビューから、再構成しています。
アメリカでは、家事の合理化が進んだ結果として、人々は家庭にあまり時間を費やさず、仕事に時間を費やすようになっている。仕事が面白くて、仕事中毒になっていく。そんな現実があります。すると人々は、今度は「家族を見つめなおすこと」に、第三の時間を費やすようになる。
本来、私たちは、家族とともに、有意義な時間を過ごしたいと考えているし、そのようにすべきだとも考えている。ところがその「すべきこと」に時間を使うことができない。アメリカ人は、そうした「時間貧乏」の状態で、「もし時間があったら、子どもたちのニーズにどうやって応えるだろうか」と考えます。もし時間があったら、かなうであろう「理想の自己像」と、「現実の自己」のあいだは、大きなギャップが生まれています。そのギャップに、アメリカ人は悩んでいます。
では、その「ギャップ」を、何で埋め合わせるのか。そこに第三の産業が生まれることになります。子どもへのプレゼント、子育ての代行、家庭内の紛争に応えてくれるサービス、等々。
社員たちは、家庭では「時間を節約」するのに、職場では長時間労働の中で「時間を無駄」にしてしまう。そんな現実のジレンマが、よく描かれている本です。