■新しい古典派とネオリベラリズムの対応
- 作者: 平井俊顕
- 出版社/メーカー: 昭和堂
- 発売日: 2012/07/01
- メディア: 単行本
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平井俊顕様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
新しい古典派は、社会哲学における「ネオリベラリズム」に対応し、これに抗する形で、「ニュー・ケインジアン」がある、という構図ですね。
新しい古典派は、非現実的な人間像を前提としている。だからその理論がいかに実証されたとしても、その有効性が完全に示されるわけではありません。そこに、ニュー・ケインジアンの余地が生まれます。「価格の硬直性」を認める立場から、有効需要の問題と裁量政策是認の立場が導き出されます。
ニュー・ケインジアンたちは、「ニューIS-LM」モデルなるものを定式化します。むろん、これによって、世界経済危機を説明できるわけではありません。ただアメリカのオバマ政権は、経済危機後に、プラグマティックな理由から、ニュー・ケインジアンの政策含意を取り入れたということであり、そうだとすれば、この時期からネオリベラリズムは退潮して、再びケインズに支配を譲った、という物語になるかもしれません。
オバマ政権から、新自由主義の退潮とみるのか。それとも、そもそもサブプライム・ローンを組ませるようなインセンティヴを与えたのは、アメリカ政府の政策であり、その時点でアメリカは、新自由主義とは異質の政策を採っていたと考えるのか。
サブプライム・ローンの引き金となった経済思想は、アセット・ベースの社会を作るという、新しい福祉国家の思想ですね。そのための市場介入ですね。政府がローンを推奨したのであり、その結果として焦げ付いたのだとすれば、そもそもの原因は、政府がアセット・ベースの市場介入をやるべきではなかったのかもしれません。
いやいや、サブプライム・ローンの問題がなくても、世界経済は遅かれ早かれ恐慌に陥ったであろう、というのが、ケインジアン的な発想なのかもしれません。