■ 宇野理論全体に転移している「悪性腫瘍」

企業の本質―宇野原論の抜本的改正

企業の本質―宇野原論の抜本的改正

 河西勝『企業の本質 宇野理論の抜本的改正』共同文化社

 河西勝様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 宇野理論全体に転移している「悪性腫瘍」をなんとかする、というモチーフが面白いですね。企業の本質は、それが資本主義の問題性をはらんだものであって、社会主義の到来とともに、その本質を変容させ、別の経営組織体になる、と考えられます。ではそのような本質とは、なんでしょうか。それは健全な社会主義の下での生産が、どのようなものになるのか、という想像力と規範的関心、あるいは理論的理解に依存しています。しかしこれらはすべて、明快に応じることが難しい問題です。
 ただ、社会主義の可能性を示唆する立場から、企業の本質を理解することはできるでしょう。本書では、企業の本質は、「循環資本」+「固定資本所有」とされます。重要な視点は、商品生産を引き受けること(売買契約)が、所有権の問題とは関係ない、という理解ですね。固定資本の賃貸借契約関係は、固定資本用益の商品化であって、「固定資本所有」はその前提にすぎません。この所有と契約という二つの要素を区別して、企業の本質を理解すると、さまざまな点で理論的な解明と整理ができる、というわけですね。