■レーガノミクスはケインズ主義

ケインズかハイエクか―資本主義を動かした世紀の対決

ケインズかハイエクか―資本主義を動かした世紀の対決

ニコラス・ワプショット『ケインズハイエクか』久保恵美子訳、新潮社

久保恵美子様、新潮社編集部の皆様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 1980年代のレーガノミクスは、一般に、「新自由主義」にもとづくものだとされています。しかし本書が示すように、多くのケインズ主義者にとって、レーガノミクスは小手先のごまかしにすぎず、その本質は、従来通りのケインズ主義政策とみなされました。例えばロバート・ソローによれば、レーガノミクスとは、支出を増やし税率を下げるという、ケインズ派の手法そのものであり、拡張的な赤字財政の典型例だとされます。ガルブレイスも、レーガンは強力なケインズ主義政策を数多く実施した、というようなことを述べています。
 というわけで、私たちは80年代の経済政策に対するイメージを「新自由主義」として一括するのではなく、もっと慎重に分析した方がよさそうですね。