■闘争にはグローバルな連帯が必要

反乱する都市――資本のアーバナイゼーションと都市の再創造

反乱する都市――資本のアーバナイゼーションと都市の再創造

デヴィッド・ハーヴェイ『反乱する都市』森田成也、大屋定晴、中村好孝、新井大輔訳、作品社

森田成也様、大屋定晴様、中村好孝様、新井大輔様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 2000年、ボリビアの中部の都市、コチャバンバで、新自由主義的民営化に対する反乱が起きます。二つの国際メジャー企業、ベクテルとスエズは追い出され、新自由主義に親和的だった当時の大統領サンチェス・デ・ロサダは、2003年10月に辞任に追い込まれます。その後継となるカルロス・メサ大統領も、2005年に辞任に追い込まれました。
 この2000年から2005年にかけてのボリビアは、真に革命的な時期だった、とみることができるでしょう。伝統的なエリートに支配された州には、貴重な天然資源があります。独裁政治が可能になるそのような状況で、先住民運動による民主化の動きが生まれました。
 けれども結果として、2005年以降のボリビアは、モラレス大統領の下で新自由主義を脱したのでしょうか。本書で紹介されているウェッバーの報告では、政治体制は結局、「再構築された(アンデス的特徴を持った)新自由主義」になった、というのです。(235頁)
 ボリビアのエルアルトという都市は、人口の80%が先住民で、非正規雇用のプロレタリアです。そのような社会で、立憲主義に対抗する人民会議型のラディカルな民主主義が生まれ、国家と対決姿勢を強めていく動きが現われました。では、こうしたラディカリズムの運動から、いかにして「連帯」の理想が生まれるのでしょうか。いろいろな種類の団体が基盤となって民主化運動が高まりますが、本書はそうした運動のなかから、都市に特有のシティズンシップの感覚がアイデンティティとして分有されることに希望を見いだしています。
 ただ、一つの都市で反資本主義闘争が成功しても、その成果がたんなる立憲的な制度改良主義に陥らないためには、やはりグローバルな連帯が必要で、都市における闘争の組織化はその出発点でしかない、というのがハーヴェイの理解です。