■ 自己否定のディレンマ

東大闘争と原発事故

東大闘争と原発事故

折原浩、熊本一規、三宅弘、清水靖久『東大闘争と原発事故』緑風出版

折原浩様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 東大では学園紛争当時、理工系の若手研究者が寄稿する『ぷろじぇ』という同人誌がありました。教員が書いた入門書の誤りを批判する、というようなことを、抜群の力量を備えた学生たちが行っていたようです。山口幸夫、高木仁三郎、梅林宏道らが参加していました。
彼らは、「大学解体」や「自己否定」の問題にも敏感に反応するような、実存主義的社会派でした。結局、みんな大学を辞めて、たとえば三里塚闘争で自分を鍛え直したうえで、住民運動市民運動に取り組みました。専門性を活かして、「民衆の科学」「市民の科学」を標榜し、それぞれ運動を担いました。
 折原先生も、このような方向で、大学を辞職する選択肢を考えましたが、しかしその方向よりも、大学という現場にとどまって、学生たちが「体制テクノクラート」になっていく軌道を、「自己否定的な反テクノクラート」の方向に転ずる方途を探ることになります。そこには「自己否定のディレンマ」という問題があった、ということが本書で綴られています。69-72頁。