■オーストリア学派経済学の入門書


自由と市場の経済学: ウィーンとシカゴの物語

自由と市場の経済学: ウィーンとシカゴの物語

マーク・スカウソン『自由と市場の経済学 ウィーンとシカゴの物語』田総恵子訳、春秋社

田総恵子様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 オーストリア学派経済学の入門書として、楽しく気軽に読むことができます。物語仕立てになっていて、飽きさせません。この分野の経済学史的な背景を、一通り押さえることができるでしょう。
 1920年代という大恐慌前夜の時代に、過剰投資ブームと大規模な信用拡張は、本当にあったのでしょうか。その答えは、どの統計データに注目するかによって、変わってきます。
 オーストリア学派のミーゼスは、当時、意図的な信用拡張と低金利政策(イギリスが金準備を維持できるように助ける目的で行った1924-1927年の利下げ)によって、にわか景気が生じた、と判断しました。
 これに対してマネタリストは、消費者物価は比較的安定していたのであって、また総じて経済はデフレ傾向にあった、と判断しています。
 どちらが正しいでしょうのか。1920年代半ばに、株式市場と不動産のバブルが生じていたことを考えると、オーストリア学派の理解のほうが正しい、というのがスカウソン(スコーセン)の見解です。