■内田義彦は居間のソファで執筆

内田義彦の世界 1913-1989 〔生命・芸術そして学問〕

内田義彦の世界 1913-1989 〔生命・芸術そして学問〕

『内田義彦の世界 1913-1989』藤原書店

山田鋭夫様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 本書は、山田鋭夫先生が編集された本といってよいのでないでしょうか。プロローグ、座談会、「内田義彦を語る夕べ」、主要作品解説など、重要な箇所を担当されています。いずれも読み応えがあり、改めて内田義彦の思想世界と向き合う機会を与えていただきました。
 本書は時間をかけて入念に仕上げられた作品であることがよく伝わってきます。様々な分野の方が執筆されており、いずれの文章も内田義彦先生に対する思いがこめられていますね。内田義彦という一人の思想家を取り巻いて、さまざまな角度から学問への思いが語られています。
 第三部では、内田義彦が書いたさまざまな断片が紹介されています。構成に流れがあり、学問とその背後にある生活の関係が豊かに語られていますね。とくに芸術論については、創造的な態度そのものを学ぶ姿勢が伝わってきます。私も自分の研究が「作品」としての価値をもつようにしなければならないと反省しました。
 本書で内田義彦先生本人も、私生活に関する興味深い話をいろいろと語っていますが、内田純一さんの執筆によるエピローグで、内田義彦(父)が書斎で執筆せず、居間のソファでブリキのお盆を膝の上に乗せて書いていた、というのは興味深いエピソードです。
 内田義彦の経済思想をどのように評価すべきかについて、いずれ真剣に取り組まなければなりません。