■現在の資本主義は寡頭的共和政である

三宅芳夫・菊池恵介編『近代世界システム新自由主義グローバリズム』作品社

三宅芳夫様、菊池恵介様、ご恵存賜りありがとうございました。

 現代の資本主義は、無産階級を大量に生み出すという末期的な状況にあり、このままでは民主国家が立ち行かなくなるのではないか。全体主義の危険が胚胎しているのではないか。そんな資本主義のシステムは、さっさと終わらせた方がよいのであるが、しかしどうやって?という問いですね。
 その終わらせ方が分かればいいのですが、やはり分からないので、とりあえず男性中心主義を克服する、自由と平等と進歩のバランスを考える、ネオ・コーポラティズムを評価する、などなどの方向性へと向かうことになります。
 あるいはまた、次のような論理。現在の資本主義は「寡頭的共和政」であって望ましくない。これを克服するためには、「少数派の意見」を尊重する「自由主義」と、政治的参加を促す「民主主義」が必要である、と。
 以上のような考え方は、自由主義と資本主義の結びつきからは、なかなか出てこないわけですね。するとやはり、社会主義の経験から濾過して学ぶべきことが多いのでしょう。そしてそれを社会変革に役立てていく方途を考えるべきなのでしょう。
問題は、ここから先、具体的に何を共有できるかですね。やはり左派のあいだでも共有できない事柄が多いから、共通の敵である「新自由主義」をつくる、ということになりがちなのですが、本書はそうした危険を避けて、新自由主義を資本主義の一段階として位置づけ、資本主義を総体として問題化しています。
 新自由主義を共通の敵として左派のあいだでまとまるというのは、論理的にまだまだ浅い。むしろ資本主義の総体を敵とすることで、もっと崇高な変革の理念にたどりつくかもしれないという、そういう可能性はあると思います。