■外国人の文化特徴を多角的に理解する

エリン・メイヤー『異文化理解力 相手と自分の真意がわかる・ビジネスパーソン必須の教養』田岡恵監訳、樋口武志訳、英治出版

田岡恵様、ご恵存賜りありがとうございました。

 これはとても面白く、しかも実用的な本です。
 現在、日本で働く外国人は78万人を超えているようです。外国人を雇用している事業所は13万か所超もあります。日本人の仕事力は現在、外国人とのコミュニケーション能力によって、試されているわけですね。これまでは、アメリカ人のビジネス・コミュニケーションの技術ばかりを参考にしてきた私たちですが、世界にはいろいろな文化的背景の人たちがいるわけで、事情に応じて柔軟に対応するのは、とても難しいです。
 でもこの本で、いろいろなことが分かります。日本人と中国人の似ているところ、異なるところなど、なるほどと思いました。私は中国人とアメリカ人は似ていて、日本人は異なるという意識をもっていましたが、意外と中国人と日本人は近いですね。
 アメリカは人種が多様で、ビジネスの場では「ローコンテクスト」だと言うのは分かりますが、ではコミュニケーションが繊細な「ハイコンテクスト」の国はどこかと言えば、まず日本、それから韓国、インドネシア、中国、ケニアサウジアラビア、イラン、となります。
 また、「原理優先」か「応用優先」か、という分類軸も、興味深いです。最初に理論や概念を示してから事実や発言や意見を示すのが「原理優先」。これに対してその反対が「応用優先」です。するとアメリカは「応用優先」の国の代表。原理をそれほど重視していないのですね。これに対して原理を優先する国とは、イタリア、フランス、ロシア、スペイン、というわけですね。もっともこのアンケート結果には日本は含まれていませんでしたが。
 でも規範理論に関するかぎり、原理的な思考によって理論を提起しているのはだいたいアングロ・サクソン圏の人たちで、イタリア、フランス、ロシア、スペインからは、主たる規範理論は提起されていないですよね。
 この他、日本人と韓国人と中国人は、いずれも感情表現が控えめで、対立回避型というのは興味深いです。世界諸国の分布でみると、日本人と韓国人と中国人は、類似の文化特性なのですね。東アジア的な文化の特徴が見えてきます。