■柴田南雄はウェーバーを意識していた

ドイツ経済思想史論集 III

ドイツ経済思想史論集 III


小林純『ドイツ経済思想史論集?』唯学書房

小林純様、ご恵存賜りありがとうございました。

 マックス・ウェーバーの『音楽社会学』を読んだ柴田南雄は、エッセイ「ウェーバーの所謂『音楽社会学』考」(1976年)を書きました。
 柴田によれば、そのテキストには「ウェーバー自身の新発見や仮説の提起といったものは当然ながら皆無」であるといいます。けれども「そこにはとくに西欧と非西欧の音組織の根元的な差異がじつに明確に把握されている」。そして興味深いことに、柴田は、「追分節考」という作品を創作するにあたって、このウェーバーの音楽研究は「ネガティヴな方向」に影響を与えた、というのですね。柴田はつまり、ウェーバーが定式化した西洋音楽を意識的に否定しようとしていたわけですね。
 ちょうど私は柴田南雄のCD「合唱のためのシアターピース」を購入したところでしたので、ここに収録されている「追分節考」を心して聴いてみたいと思います。この曲は1973年の作品で、「脱西洋式編曲、脱五線譜、脱音楽会的合唱曲」ということです。私は柴田の作品を、数か月前にYouTubeで発見して、とても気に入ったのでした。