■成長論的なリバタリアン?

森村進「グローバリゼーションと文化的繁栄」『人文・自然研究』(一橋大学)第四号[2010]

森村進様、ご恵存賜りありがとうございました。

・これは驚き。グローバリゼーションは文化の繁栄をもたらすので、文化事業に対する公的支援をする必要はない、という。成長するから介入する必要はない、という、これはつまり、成長論的リバタリアニズムではないか。

リバタリアニズムが、オペラなどのハイ・カルチャーに、国家支援を求めるような立場(例えばドウォーキンのようなリベラリスト)を批判するのは、分かる。しかし例えば、全国の地方自治体にある図書館のような制度を、リバタリアニズムは私営にすべき、というのだろうか。

・ラディカルな左派が求めているのは、例えば、図書館などを通じて、インターネットを無料で利用できるようにすること。そのほうが、文化的繁栄をもたらすかもしれない。もし成長論的な基準でもって文化制度の正当化を図るなら、リバタリアニズムの強固な基礎は崩れてしまうようにみえるのだが。森村流リバタリアニズムも、たんなる直感基礎付け主義ではなく、成長論的な構えを持っているということは、この論文から押さえておきたい。