■サッチャーのレトリックこそ闘争的民主主義の原型

サッチャリズムの世紀 新版―作用の政治学へ

サッチャリズムの世紀 新版―作用の政治学へ

豊永郁子『新版 サッチャリズムの世紀』勁草書房2010年

・豊永郁子様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

・イギリスは、1979年のサッチャー政権の誕生によって、コーポラティズムによる合意の政治から、党派的な二大政党制に移ったというのは、一面的な見解にすぎない。コーポラティズムは1970年代の一時的現象にすぎなかったという見方もある。あるいは、サッチャーが実行した政策、例えば公共住宅の払い下げは、約10年前から保守党が掲げていたもので、サッチャーはそれを、友敵関係の党派的なレトリックでもって実行したにすぎない、という見方もある。いずれにせよ、労働者たちは、この払い下げ政策を支持した、という事実は重要。サッチャーは、労働者を味方につけて、労働党を敵とした。こういう戦略から、何を学ぶべきか。闘争的民主主義そのものではないか。