■自由に育てる/自由を育てる

教育 (自由への問い 5)

教育 (自由への問い 5)

広田照幸編『自由への問い 5 教育』岩波書店、2009年

広田照幸先生、ご恵存賜り、ありがとうございました。

・宮寺晃夫「自由を/自由に育てる」は、重要。成長論的自由主義の観点から賛同したい。法的な場面で争われる言説を検討するかぎり、親の教育権を擁護する議論は、「自由に育てる」という、リバタリアン的な、あるいはリベラルな選択の理念になってしまう。だが教育学は、個々の家庭が、子供を「自由に育てる」のではなく、子供の精神に「自由を育てる」という、そういう配慮をするのであり、プライバシーに踏み込んで政治を考える。本論文は、そのような教育学の使命を、多元的な政治的討議の場で、話し合うことによって導こうとする。では、政策的・制度的な装置として、「自由を育てる」ためには、どんな工夫が考えられるのか。これは成長論的自由主義にとって、重要な問い。

・本論文は、初期教育にはできるだけ第三者の介入を避けるべきというが、これと対照的な考え方は、ロバート・オーウェンの幼児教育論で、ベンサムが支持したもの。幼児をできるだけ社交的に育てることが、自由を育てることに資すると考えられる。「自由を育てる」ために、例えば、幼児園の無償化、というアイディアは有効だろうか。あるいは、「自由を育てる」という目的のために、その目的を実践していると称する、日本のシュタイナー学校には、一定の公的補助を支給することができるだろうか。思想を制度に受肉するためのアイディアとして。