■民主党は保守派を包摂するチャンスだ

大澤真幸「緊急発言 普天間基地圏外移設案」朝日出版社電子書籍、PDF版、2010.5.

http://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255005300/

大澤真幸様、電子書籍という新しい形態でご論文をご恵存賜り、ありがとうございました。

普天間基地は、日本のどこかに移設するのではなく、消滅させるべきである、という主張。もし鳩山首相がこのような宣言をしたら、どのような事態になるか。小説風の文体を取り入れながら、とてもスリリングに語られている。時事問題として、いま最もホットな問題に、これほど豊かに、また大胆に応じることができるとは、脱帽である。これからはこうした電子書籍というかたちで、一つの論壇のスタイルが成立しそうである。雑誌ではあまり長い論文を載せられなくなっている。

・さて、普天間基地問題は、本当に些細な問題で、しかし民主党外交政策というものが、いかに理想論でしかなかったか、ということを先鋭的に露呈してしまった。保守派の人たちは、多くの場合、新米であり、アメリカに従属することが望ましいと考えている。だが保守派のなかにも、反米で、普天間基地を消滅させることに、賛同する人もいるだろう。保守か、リベラルか、という対立で考えていると、問題は見えてこない。ここは民主党が、真の保守であり、したがってアメリカの属国であることをやめるのだ、という宣言をしてもよいのではないか。保守的な人びとを取り込むための、絶好のチャンスでもあるのだ。

アメリカはいま、オバマ政権のもとで、核軍縮を進めている。そのオバマの英断を支持する立場から、日本は、アメリカの駐留基地を縮小するという提案をしてみてはどうか。オバマ大統領を広島に招き、日本も軍縮に協力できることを、具体的に示してはどうか。核軍縮の国際政治に、日本もできるだけ絡んでいく。そういうシンボリックな政治が必要だ。