■ピューリタンは社会構想力をもっていた

ヴェーバーとピューリタニズム―神と富との間

ヴェーバーとピューリタニズム―神と富との間

梅津順一『ヴェーバーとピューリタニズム 神と富との間』新教出版社、2010年

・梅津順一様、ご恵存賜りありがとうございました。

バクスターのさまざまな著作を、丹念に紹介されているところが、とても勉強になりました。バクスターという人は、ウェーバーが紹介しているよりも、もっと深く、人間を観察していることが分かります。いわゆる道徳哲学などよりも、だんぜんに人間学的な含蓄に満ちています。バクスターを尊敬できるようになりました。

・このピューリタニズムの労働観が、社会構想としては、「慈愛の共同体」へと向かい、やがて福祉国家を形成するような実践に至ったことは、重要な理路です。ウェーバーは、ピューリタニズムの実存的な関心や精神の起動力に焦点を当てていますが、バクスターの社会構想力に焦点を当てるならば、別の思想史的な流れを描くことができますね。

・慈愛の共同体が、近代の福祉国家へとつながっていく。ウェーバー社会民主主義的な発想を嫌っていたわけですが、むしろピューリタニズムの思想は社会民主主義を用意したのであり、その精神は制度に結実したといえるでしょう。この制度的結実は、しかし、精神なき専門人を生むことになるとしても、です。ピューリタンは、パーリア知識人ではなく、社会構想のユートピアを掲げていたことは、共感できます。いずれにせよウェーバーの関心は、官僚制機構が「鉄の檻」になっていく点にあったので、資本主義の下での大企業にせよ、社会民主主義の下での政治機構にせよ、精神が失われていく点を問題にしたでしょうけれども。