■国民の福利を考える

成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン―

成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン―

中野剛志編『成長なき時代の「国家」を構想する』ナカニシヤ出版、2010年

中野剛志様、五野井郁夫様、それから執筆者すべての皆様、ご恵存賜りありがとうございました。

・日本という国をこれから作っていく、そのための若き才能とエネルギーに満ちた本ですね。基本的な発想として、GDPよりもよい指標を「国民福利」として考える。そしてその指標を満たすように、経済政策を考えていく。それはGDPという指標が支配的になった高度経済成長期から、ずっと課題でありつづけているわけですが、本気でこれを進めるためには、何かもう一つ、必要なことがあるような。

・それが分かれば、国家の構想は、すべてうまくいくようにも見えます。新たに別の有効な指標を作れば、右派も左派も納得するのではないか。保守も進歩も納得するのではないか。けれども、そういう方向に議論を持っていくためには、まず右派だったらどんな指標を大切にするか、といった議論を積み重ねるほかないでしょう。ただ、それぞれの立場の人たちが、実はふたを開けてみると、同じ経済政策を支持していたりするので、経済政策というのは、思想的に扱いにくい面がある。やはり指標の中身で争うような、そういう議論を、いま思想界で活躍している人たちに投げかけて見たいですね。いろいろと触発されました。