■グラスゴーに滞在されていたのですね

一ノ瀬佳也「商業の発達と道徳の役割」『創文』2010.11.

・一ノ瀬佳也様、ご高論をご恵存賜りありがとうございました。

・ヒュームによれば、所有権とは暴力と簒奪によって始まった制度であるという。にもかかわらず、人類は次第に、交換経済を発達させて、互いに他人のものには手を出さないという「さまざまなマナー」を発達させていった。そして実は、所有権システムがうまく機能する理由は、人々が自生的な伝統・慣習のなかで、マナーを共有するようになったからであり、マナーこそが、所有権の法的な根拠にもなっている。これがヒュームの洞察。

・そのような発想をうまく法的に確立するためには、マナーとはいったいどんなものかについて、一つ一つ明確にしていかなければならない。それでハチソンは、家族制度が大切であると考えたわけです。しかしマナーは、そのすべてが明確にされているわけではないのです。しかもマナーは、少しずつ変化していく。結局、マナーを維持するための統治術は、既存の道徳や慣習をできるかぎり維持する、という保守的な態度になるでしょう。これに対して、マナーを維持しなくてもいい領域は、海外との開かれた関係のなかで模索されることになる。ヒューム的に発想すれば、これが最適な統治方法になるかもしれないですね。どうかな。