■資本主義をめぐる講義集

どうなる私たちの資本主義 現代市場社会の「解体新書」

どうなる私たちの資本主義 現代市場社会の「解体新書」

平井俊顕編『どうなる私たちの資本主義』上智大学出版

平井俊顕様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 講義集ですね。いろいろなアイディアがちりばめられていて、大いに参考になりました。それにしても、物価変動が激しい社会では、あるいはインフレ率が高い社会では、会計計算というものが、意味をなさなくなる、という指摘は重要です。貨幣の価値尺度機能をできるだけ安定にすることが、合理的な計算の基礎になる。だから貨幣は、その意味で、価値を安定的に保つように、制御されなければならない。

 物価を安定させるためには、例えば、ケインズ的な介入政策が必要になるでしょう。もしケインズ的な政策がインフレ率を上昇させる原因になっている場合には、できるだけ市場介入を減らすべきであり、反対にインフレ率に問題なければ、ケインズ的な介入政策を推進してよい、ということになるでしょうか。

 ブルーノ・アーマブルの『五つの資本主義』は、啓発的です。スウェーデンデンマークフィンランドは、「北欧型」の新自由主義社会といえます。高福祉でありながら、市場競争を徹底している。そのようなモデルは、どこまで理想的なのでしょうか。比較制度分析の視点から、この問題を規範的に考えることが、現代の経済思想に求められているように思われます。