■日本人は他人を信頼しない、政府を信用しない
- 作者: 井手英策,半田正樹,菊地登志子
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2011/04
- メディア: 単行本
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井手英策/菊池登志子/半田正樹編『交響する社会』ナカニシヤ出版
井手英策様、菊池登志子様、半田正樹様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
現代の福祉国家の位相をめぐる最新の議論を踏まえた論文集です。
第三章、井手先生の論文「調和のとれた社会と財政」に紹介されているデータは、とても興味深いです。International Social Survey Program, “Citizenship 2004”のアンケート調査ですが、「他人と接するとき、相手を信頼できるか、用心したほうがよいか?」という質問に対して、日本人はなんと、最低の信頼度を示しています。北欧諸国はとりわけ、他人を「大抵信用してよい」と答えるのですが、日本人の場合、「大抵用心したほうがよい」「いつでも用心したほうがよい」と答える人の割合が最も多いのです。アメリカ人よりも、日本人のほうが、他人を信頼していない、というデータ結果です。
また、同じ調査で、「大よそ政府の人々は信頼できる?」という質問に対しても、日本人はダントツで、政府を信頼していないことが判明します。政府を信頼できない、と答える人の割合が、60%以上の国は、ドイツと日本のみ。これにオーストリアがつづきます。アメリカ人は結構、政府を信頼していることが分かります。
この調査から分かる日本人の特性は、コミュニティや人間関係のあり方が、「結束的」な共同価値を求めるものではあるが、「他者との関係を接合する」ような、開かれた共同性を構築する方向にはあまり向かわず、結果として、個々の共同体を超える「政府」に対しては、あまり信頼を寄せることができない、ということではないでしょうか。
こんな心性で、はたして増税による福祉国家の再建は成功するのでしょうか。ユニバーサリズムの手法であれば可能である、ということなのかもしれませんが、それが実践的に問われているように思いました。