■現実的な政策の道筋をさぐる

働く―雇用と社会保障の政治学 (政治の発見)

働く―雇用と社会保障の政治学 (政治の発見)

宮本太郎編『働く 政治の発見2』風行社

宮本太郎様、田中拓道様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 本書は主に、ヨーロッパの福祉国家の現状を分析する諸論文から構成されています。

 労働世界を再編するための四つの条件として、宮本先生が指摘しているのは以下のとおり。?賃金のあり方を再設計すること。男性稼ぎ主の安定雇用の世界ではもうだめ。?非正規労働者の能力開発の機会を生み出すこと。?女性の労働、ワークシェアリングのために、保育や介護の公共サービスを充実させること。?見返りのある仕事を作り出して、共働きであれば生活が維持できる条件を生み出すこと。(139-140頁)

 ホール/ソスキス編『資本主義の多様性』にもとづく分類で、「自由主義市場経済」と「調整型市場経済」という二つの類型がある。(以下、西岡晋論文より。149頁以下参照、)これによると日本は依然として、アングロサクソン諸国とは異質の、「調整型市場経済」に位置づけられる。
 近年では、全体として、「自由主義市場経済」の諸国よりも、「調整型市場経済」の諸国のほうが、経済的なパフォーマンスが平均してよい結果になっているという。
 論争的な点として、ソスキスによると、「自由主義市場経済」は、「多数代表制、二大政党制、単独政権、多元主義」といった政治システム(排他的で競争的で敵対的)と結びつくのに対して、「調整型市場経済」は、「比例代表制、多党制、連立政権、コーポラティズム」といった政治システム(包摂的、交渉的、妥協的)と結びつく傾向があるという。はたして、この経済システムと政治システムの結びつきは、たんなる偶然なのだろうか。それとも、理想の政治のための経済的基礎というものがあるのだろうか。