■ハイエクは常識的な思想になった
- 作者: 仲正昌樹
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2011/08/26
- メディア: 単行本
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仲正昌樹様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
とくに法哲学的な観点からのハイエクを、見事に咀嚼して解説しています。これまでにないハイエクの魅力を解説した、入門書ですね。
いつもながら、面白い「あとがき」から読ませていただいています。
仲正先生によると、ハイエクの思想は、あまりに「常識」的であるように思え、びっくりするようなどんでん返しが、なかなか見当たらないということです。ですが私がハイエクを読んだ頃は、かなり非常識なことが書かれているように思われました。80年代のことです。その当時は、市場は根源的に不安定なので、その不安定性に対処するために、政府介入を正当化することができる、というのが、マルクスとケインズ(あるいはヴィクセル)を研究している人たちの共通の思考方法でした。そのような発想法からすれば、市場の自生的秩序というのは、非常識でした。でも今となっては、一つの常識的な考え方になったのでしょうね。
哲学・思想がやるべきことは、普通の人の常識からはなかなか出てこない、逆転の発想のようなものを示し、読者に生き生きとした新鮮な感動を与えることである、というのは、なるほど頷けます。そういう哲学・思想を、大切にしたいですね。いまの時代に求められている思想は、こうした観点からすると、ロールズやハイエクではなく、ケインズでもなく、もっとラディカルなものなのかもしれません。