■バイオガスプラントの矛盾

グリーン・エコノミー - 脱原発と温暖化対策の経済学 (中公新書 2115)

グリーン・エコノミー - 脱原発と温暖化対策の経済学 (中公新書 2115)

吉田文和『グリーン・エコノミー』中公新書

吉田文和様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 3.11原発事故の後に書かれた、環境経済学に関する最良の入門書です。EUでは、持続可能な社会のために、さまざまな指標を組み合わせて社会のパフォーマンスを評価するという方向に動いています。日本もまた、そのような指標の組み合わせによって、自国の経済システムを判断するという、そのような熟慮と良識が求められているのでしょう。
 ところで、北海道の別海町では、いくつかの農家でバイオガスプラントが使われています。それによって余った電力は、電力会社に売電されています。ところが、電力の買取価格が低いために採算が取れず、結果として、夜は発電できずに、家畜排出物から生まれるメタンガスを大気中に放散する場合もあるようです。すると結局、地球温暖化を促進することになってしまうのですね。
 そういう矛盾を解決するためには、電力会社は夜間も、バイオガスプラントで作られた電気を買い取る必要があるでしょう。夜間の買取価格を低くしてでも、電力会社が電力を買い取るという仕組みがなければ、地球温暖化を促進してしまいます。現行の制度には、そういった問題があるのですね。勉強になりました。(とりわけ、198頁以下、参照。)