■AKB48に現代の世相を見る

PLANETS SPECIAL 2011 夏休みの終わりに

PLANETS SPECIAL 2011 夏休みの終わりに

宇野常寛編集『PLANETS SPECIAL 2011 夏休みの終わりに』

 いつもながら、本当にすばらしい編集です。これだけの内容を盛り込んだ雑誌は、他にはないでしょう。
 小林よしのり×中森明夫×宇野常寛の対談を、興味深く読みました。AKBの歌の歌詞が、自分たちの生活や心情のことを歌っている。こういうパタンは、これまでになかったというのは、確かにそうですね。
 「あなたが好きよ」といった、ファンの人たちに擬似恋愛の感覚を与えて喜ばすというのではなくて、総選挙などがあるAKBのシステムそのものが、社会の縮図になっている。AKBをみて、その歌詞を聴けば、社会の厳しさとすばらしさが、同時に分かるようになっている。
 だからファンと一体化するといっても、AKBの場合は、アイドルとファンのあいだで、カプセルのように閉じてしまうのではない。そこから日本を変えていくぞ、世界に飛び出していくぞ、といった開放的で積極的なメッセージがあるわけです。これはつまり、AKBというのは、戦時中の特攻隊が果たしていた役割を引き受けているのではないか。そういう「強度」と「緊張感」のある生活が、人々を励まし、人々が付いてくるための理由となっている。
 「国民的アイドル」というものが、いまなお可能であるとすれば、AKBのような社会の縮図が必要なのでしょう。昨年私は、AKBの映画をみましたが、自分はこの集団の中でどういう役割を与えられているのか、ということに、メンバーはそれぞれ自覚的であることが印象的でした。