■草食系と異性恐怖症

大学生と語る性―インタビューから浮かび上がる現代セクシュアリテイ

大学生と語る性―インタビューから浮かび上がる現代セクシュアリテイ

田村公江/細谷実編『大学生と語る性 インタビューから浮かび上がる現代セクシュアリティ晃洋書房

川畑智子様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 以前に、小生の授業でこのテーマをめぐるアンケート調査を行っていただいたことがありましたね。その結果は載っていませんでしたが、同プロジェクトの成果の一部が本書にまとめられています。
 本書の前半(第一部)は、大学生と語る「性」ということで、いくつかのインタビューが載っています。本邦初の試みだそうで、興味深いです。
 また、第二部に収録されている川畑先生の「ドメスティク・バイオレンスが女性の性意識に与える影響」を拝読しました。幼いころに、アルコール依存症の父親からDVを受けた女性が、大学生になって、どのように男性とコミュニケーションを成立させていくのか。インタビューからさまざまなことが明らかにされています。
 男性恐怖症というか、異性とのコミュニケーションが怖くて苦手というのは、DVを受けなかった場合にも、起こりうるかもしれません。恐怖症は、DVとどの程度関係しているのでしょう。
 他方で最近、「草食系男子」ということが語られていますが、それは本書のなかでも森岡正博氏の見解として紹介されているように、異性に対してガツガツしていない、傷つくこと/傷つけることが苦手、異性を異性として見る前に「一人の人間」としてみている、というような特徴をもっているようです。
 すると、草食系と、異性に対する恐怖症との関係は、どの程度密接なのでしょうか。DVの顕在化と、草食系の浸透は、同時代的な現象として、どのように関係しているのでしょう。関心がわきました。