■ハイエクの理論的挫折から何を学ぶか

資本の純粋理論〈2〉 (ハイエク全集 第2期)

資本の純粋理論〈2〉 (ハイエク全集 第2期)

ハイエク著『資本の純粋理論Ⅱ』ハイエク全集第二期、第九巻、江頭進訳、春秋社

江頭進様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 この第二巻で、『資本の純粋理論』の翻訳が完成されましたことを、心よりお喜び申し上げます。本書でハイエクは、資本について類型的に分けられる内容を、一つ一つ丹念に調べていくという研究アプローチをとっています。資本をめぐる専門書であり、数学的な手法を使わなかった点で、わかりにくい点も、多々あるのだと思います。ハイエクが戦争を逃れて、疎開先のケンブリッジで書き上げた本です。ハイエクは、本書の「第四部」で、本格的なケインズ批判をする予定だったけれども、それが未完成に終わった、というのが痛いですね。ハイエクは大きな挫折を経験したのだと思います。けれども一方で、『隷従への道』がベストセラーとなり、ハイエクは一躍有名になります。アカデミックな研究での挫折と、論壇での成功という、二重の経験をしたわけですね。