■オイコノミアの神学的な意味

<世界史>の哲学 中世篇

<世界史>の哲学 中世篇

大澤真幸著『〈世界史〉の哲学 中世編』講談社

大澤真幸様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 大変啓発的です。アガンペンの『王国と栄光』に依拠して展開された箇所で、「経済(オイコノミア)」の神学的な意味についての、興味深い記述があります。
 神の存在が、その被造物からまったく超越したものだとすれば、それは存在を記述するとしても、神が人間を救済する実践については、何も語りません。そこで中世的世界に登場するのが、神のオイコノミア的パラダイム。それは神の世俗的な権力に対応するもので、神がこの世界をどのように統治しているか、に関わる理解です。
 神は、この世俗的世界において、恩寵を公正に配分しているわけではない。地上のあらゆることを気にかけるというのは、偉大な神にとってふさわしいことではない。神は全知ではない。まず中世のキリスト教では、そのように理解されます。その上で、個々の人間に対する恩寵の配分は、「神の代務者」(一般には天使、あるいは原型としてはキリスト)が行うことになる。代務者が行う救済は、「種別摂理」と呼ばれることになります。