■健康不安をあおると医療費がかさむ

健康不安と過剰医療の時代

健康不安と過剰医療の時代

井上芳保編『健康不安と過剰医療の時代』長崎出版

井上芳保様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

大変すばらしい内容の本です。
本書は問いかけます。健康不安をあおって、さまざまな高額の検診や健康食品にお金を費やすような社会は、はたして健全なのか、と。それはもちろん、健全ではない。けれども私たちは、いやおうなく巻き込まれている。それが私たちの社会の実態でしょう。
 冒頭に、「メタボ検診」の話題がありますが、これはとても皮肉な社会現象だったのですね。医療費を抑えるために、メタボにならないように啓発しよう、というのがそもそもの意図でした。それは官僚が思いつきそうな政策でした。ところがメタボを抑えるために、医療費がかさんでいく、というパラドックスが生じてしまったのです。
 この他、職場の健康診断で、高血圧の「異常」がここ数年、増加している、ということですが、その背景には、高血圧の基準が変更された、ということがあるというのですね。1987年には、180でした。ところが、2000年になると、年齢別に水準が規定され、59歳以下は130以上の値になると、「異常」とされてしまうのですね。そのように認定されると、高血圧を下げるために「降圧剤」を投与されることになるわけですが、その降圧剤のほうが、健康に悪い、という矛盾も生じています。