■啓蒙の弁証法は、別格
- 作者: 仲正昌樹
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2012/02/25
- メディア: 単行本
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仲正昌樹著『現代ドイツ思想講義』作品社、2012年
仲正昌樹様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
この本の中心は、アドルノ=ホルクハイマーの名著『啓蒙の弁証法』の精読と解説です。三つの章にわたって、本書をめぐる議論が続きます。私も学部生のころ、『啓蒙の弁証法』の内容を理解したくて、必死に翻訳を読んだ覚えがあります。本書のような丁寧な解説があると、とても近づきやすいですね。
それから本書では、最初と最後に、ドイツ思想の源流と、最近のドイツ思想について、それぞれコンパクトにまとめられています。このまとめを読むと、スローターダイクという思想家は、やはり興味深い人です。ヒューマニズムというのは、人間を飼いならすための理念であって、そのように飼いならされた私たちは、これを否定できずに、ただ飼いならされてしまったことに対して、不平を述べることしかできません。
いずれにせよ、ドイツの思想家たちは、その多くが亡命したことで、世界性を獲得すると同時に、ドイツ本国では、有名な思想家が現れにくい状況が生まれました。それをどう受けとめて、現代のドイツ思想を評価するか、という問題がありますね。