■ 金持ちほどセコいのか

本当の経済の話をしよう (ちくま新書)

本当の経済の話をしよう (ちくま新書)

若田部昌澄/栗原裕一郎『本当の経済の話をしよう』ちくま新書

若田部昌澄様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 やはり、レヴィット著『やばい経済学』からのネタ紹介が面白いですね。
 ベーグル売りのフェルドマンは、ベーグルを無人で売ることにしました。ベーグルの近くに、代金回収箱を置いておいて、お客に「一個一ドル」の代金を支払ってもらうようにしました。支払いをお客さまの「良心」にまかせて、ベーグルを売ったのです。すると、代金の回収率は9割程度だったそうです。うまくいきました。
 ところが観察から分かった興味深いことは、ホワイトカラーや役員クラスのお金持ちの人の方が、代金をちょろまかす確率が高いという点です。お金持ちなのに、セコいんですよね。「良心の呵責」にさいなまれないのでしょうか。言えることは、ずるくて、セコい、という性格は、出世する確率と正の相関をもっている、ということかもしれません。
 もう一つ、これも『やばい経済学』のネタですが、日本の相撲で、八百長がなされる経済的動機を分析したものです。八勝六敗の力士と、七勝七敗の力士が、千秋楽で対戦する場合、七勝七敗の力士が勝つ確率は、歴史的にデータを分析してみると、八割程度もあるそうです。
 これは、裏で取引がなされているのではないか、という推論をかきたてます。力士にとって、八勝七敗と七勝八敗とでは、大きな違いがあります。他方で、すでに八勝六敗の力士にとっては、最後の対戦で、九勝六敗になるか、それとも八勝七敗になるかの違いは、あまり大きくありません。そこに取引の余地が生まれる、というわけです。