■出版社、倒産ギリギリからの物語

神保町の窓から

神保町の窓から

栗原哲也『神保町の窓から』影書房

栗原哲也様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 日本経済評論社の社長、栗原さんのコラムをまとめた本です。出版業界のよもやま話が満載です。
 栗原さんは大学を卒業されてから、最初は、文雅堂銀行研究社という出版社で、雑誌『金融研究』の編集をされていたようです。ところが同社の展望が見えないということで辞職、あらたに先輩たちと日本経済評論社を立ち上げたのが、1970年の秋だったそうです。
 創立から5年間はピンチもあったようですが、70年代の後半には、20人の社員を抱える会社に成長しました。ところが創立から10年目、1981年3月に経営の危機を迎え、債権者集会が開かれました。そのときの債権者の意向を受けて、栗原さんは社長に就任します。そして倒産ギリギリの状況から、会社を立て直されたのですね。その時に残った社員は、谷口京延さんと、入江とも子さん、そして入社半年もたたない清達二さんの3人だけだったそうです。 (谷口さん、そうだったのですね!)
 栗原さんは述べます。
 「ここで畳んでおけば後のたたりはなかったのでしょうが、多くの債権者はそれを許しませんでした。逃げる方法も知らず、また度胸もありませんでした。未來社の先代西谷能雄さんが『そんな会社にかかわるな。お前も家族も目茶苦茶になるぞ』と忠告してくれましたが、もう手遅れでした」と。
 本書は、その後の奮闘記です。日本経済評論社が、いかにたくましいか、ということが分かります。社長への尊敬の念をあらたにしました。