■ おいしい牛丼の背後で

グローバリゼーション再審―新しい公共性の獲得に向けて

グローバリゼーション再審―新しい公共性の獲得に向けて

平井達也・田上孝一助川幸逸郎・黒木朋興編『グローバリゼーション再審 新しい公共性の獲得に向けて』時潮社

田上孝一様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 本書の序文につづいて、2編の詩があり、それから第一部、第二部、第三部とつづくのですが、音楽やファッション、戦争や浮世絵など、興味深い話題が盛りだくさんですね。
 「肉と野菜をバランスよく食べよう」といわれますが、それは非常識であって、肉を食べなくても大丈夫、というのがベジタリアンの田上さんの主張です。
 牛丼について言えば、なぜアメリカ産の牛肉でないと、牛丼用の肉としては味気ないのでしょう。
 アメリカではまず、生まれたばかりの牛を12か月前後放牧します。それから六か月くらいかけて、穀物を与えて飼育して、脂肪の割合が増え始める直前のピークで屠畜します。すると、濃厚な味の牛肉として出荷できるというわけです。
 ところがその場合、牛はおよそ一年半しか生きることができません。しかも、最後の六か月は、牛はフィードロットという狭いところで飼育されます。これは動物虐待だ、というのですね。もっともです。しかも、フィードロットで与えられる飼料(大豆やトウモロコシ)は、肉一キロを生産するために10キロ前後も必要です。その飼料は、必ずしも人間にとって適したものではないかもしれませんが、それを直接食べたほうが、よっぽど人間にとって栄養的かもしれないというご批判は、なるほどと思いました。