■命名は、人間中心主義を抑制する

原子力時代の驕り: 「後は野となれ山となれ」でメルトダウン

原子力時代の驕り: 「後は野となれ山となれ」でメルトダウン

R・シュペーマン『原子力時代の驕り』山脇直司・辻麻衣子訳、知泉書館

山脇直司様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 シュペーマンは、キリスト教を背景にして、原発に反対する論理を組み立てています。その内容の一部に、人間中心主義に対する批判があります。キリスト教は、人間中心主義を避けようとします。例えば聖書は、神が人間に、自然支配を委託するという説明を与えていますが、その委託において、人間は動物に命名します。命名は二つの役割をもっています。一つは、命名された動物を、人間の意のままにできるというものです。もう一つは、命名されたものが、その自立的な存在性格を与えられて、たんなる「利用」の対象とは区別されるというものです。
 人間中心主義の立場から、人間の生存のために環境を保護すべきである、という発想では、どんどん自然が破壊されていく。「人間の生存」のためにではなく、むしろ、動物たちの自立した生存を望む立場から、命名を考える、あるいは自然を保護していく。そのような発想が必要というわけですね。