■ 信頼の拡張装置としてのインターネット

PLANETS vol.8

PLANETS vol.8

第二次惑星開発委員会『ブラネッツ vol.8.』

宇野常寛様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 本当に半端じゃない編集力ですね。読みどころ満載の雑誌です。
 最初の対談を興味深く読ませていただきました。「僕たちは〈夜の世界〉を生きている」というテーマですが、これはつまり、これまで日本社会を変えてきたのは、いわゆる「市民社会」派の活動であったり、あるいは経済における「ものづくり」の職人的な技であったりしたわけですが、そうした活動よりも、これからはサブカルチャーやインターネットが社会を変えていく、という読みですね。
 日本型のイエ社会の構想力は、血縁関係の「家」を超えて、会社や関連業者を巻き込んで、人々のあいだで厚い信頼関係を築いていくことに成功しました。日本経済の成功の最後には、そのようなコミュニケーション能力の旺盛な発露があったと考えられます。
そのコミュニケーション能力の豊かさは、今度はインターネット上で、例えば「iモード」のようなものを産み出し、世界をリードしているのだ、と。
 ただ、ネット上のソーシャルメディアが、権威主義の政治を崩壊させることに成功したとしても、民主的コミュニケーションを練り上げて成熟させるような装置としてうまくいくかは、未知数ですね。
 LINEの成功にしても、それは、ソーシャルメディアの発達を示すというよりも、むしろ「友達とメールさえできればいい」という程度のコミュニケーションで事が足りている人たちがたくさんいて、そういう人たちの基本的なニーズを満たしている、ということですね。夜の世界たるソーシャルメディアが、社会を変革するための議論の場となるような事態は、まだあまりみられない。
 日本で発達してきたのは、LINEのスタンプのように、自分をあるキャラクターに模して、つまり「キャラ化」を通じて、自己を表現するということです。匿名でもなく、なまの自分でもなく、ある種のアバターなのでしょうが、自分を「分化」させた一つの人格として、ネット上で演技を引き受けるキャラクター(人物)となる。
 こうした、ペルソナとしての人格形成(整形?)を通じて、ネット上でさまざまなコミュニケーション作法が自生的に生成していく。それがまた、新しい時代を築いていく、というのはある意味で、コミュニケーションの正統な発展のようにみえます。