■ 貧民窟に住んでいた清水幾太郎
- 作者: 若林幹夫
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 2012/09/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 5回
- この商品を含むブログを見る
若林幹夫『社会(学)を読む』弘文堂、現代社会学ライブラリー6
若林幹夫様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
社会学者の清水幾太郎は、貧民窟と呼ばれた東京の柳島横川町に住んでいて、そこで関東大震災に遭遇し、その後生じた、諸々の事件(例えば、大杉栄一家の虐殺、朝鮮人の殺戮など)に刺激されて、自分の一生を社会学に捧げようと思った、ということなのですね。
清水幾太郎は、それまでは医者を志望していたけれども、一家が無一文になってしまって、それまで読んできたアナキズムの文献から得た断片的な知識に火がついてしまったようです。その頃、社会学というのは、まだほとんど知られていなかったでしょう。社会学を志すというのは、大きな決断だったと思います。
その際、清水幾太郎は、自分の視点を、フランスの社会学者、コントと重ね合わせたようです。コントは、敬虔なカトリックの両親に育てられてきたのですが、フランス革命の経験を通じて、新たに「知的卓越」のみを「権威」とするような、啓蒙思想を打ち立てます。混乱期を生きたという点で、清水はコントと自身を重ね合わせたのですね。