■戦争する主観的コストを高めていく
平和主義とは何か - 政治哲学で考える戦争と平和 (中公新書)
- 作者: 松元雅和
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/03/22
- メディア: 新書
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松元雅和『平和主義とは何か』中公新書
松元雅和様、ご恵存賜り、ありがとうございました。
民主主義の国同士では、戦争をするコストが高くなります。コストが高いので、戦略的な意味で「平和主義」を採用する方が功利的に望ましい、ということになる。あるいは、民主主義ではない国でも、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が発達すれば、戦争のコストが高まります。
よく、平和主義者に投げかけられる問いに、「もし愛する人が襲われたら、それでも非暴力をつらぬくことができるか」、というものがあります。おそらく、ほとんどの人は、その場合の暴力を認めるでしょう。しかしこのことは、人が平和主義者になれないことを意味するわけではありません。質問がトリッキーなのですね。
人は、無条件に平和主義者である必要はありません。一定の条件を前提としたうえで、「平和主義」を支持することができます。また人は、私的な場面で「非平和主義」でも、公的な場面で「平和主義」を選択することができます。
平和主義者のなかには、個人の信条として「非暴力」を掲げる人もいますが、本書では、もっと戦略的・効率主義的な視点から、「平和優先主義」の意義を検討しています。この立場が現実的になるためには、多くの人々が、戦争の主観的コストを高く見積もることができるように、あるいは平和から得られる効用を高く見積もることができるように、自身の効用に関する考え方を変化させていくことが必要になるでしょう。そのための啓蒙書として、本書はさまざまな視点を提供しています。