■中国社会の三原則

おどろきの中国 (講談社現代新書)

おどろきの中国 (講談社現代新書)

橋爪大三郎大澤真幸宮台真司『おどろきの中国』講談社新書

橋爪大三郎様、大澤真幸様、宮台真司様、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 鉄器時代になって、中国の官僚制は、農民の有能な人間も、リクルートするようになります。儒家思想は、もともと農民を「支配される者」として位置づけていましたが、ただし、「農民のなかでも、上昇志向の強い脱農民層」を支持することは、ひとつのモチーフになっています。社会の支配は、「血縁カリスマ」によってではなく、「有能な行政官僚」によってなされなければならない、ということですね。有能な人間をリクルートして、「忠」の倫理を植えつける。これが儒家統治の基本です。
 ところが一方で、中国は多民族国家なので、「血縁集団」を超える集団に対して、心情的なコミットメントを産み出すことは、なかなか難しい。だからまず、社会全体としては、政治的な統一を作りだして、その次に民族を作りだす、ということになります。
 政治的統一のためには、抽象的理念が必要です。それが例えば、「太平天国の乱」におけるキリスト教であったり、毛沢東の中国共産主義であったりするわけです。日本人がナショナリズムと民族感情を一体化させるのに対して、中国ではそのような意味での「ネイション」は立ち上がりにくいといえるかもしれません。
 橋爪先生によると、中国の社会組織の原則は、次の通り。

 (1) 自分は正しくて立派。これが第一。
 (2) でも、他人もみんな、自己主張している。
 (3) だから、自分と他者が共存するための枠組みが必要。そのためには、実質的な政治的実力者が必要となる。

 以上。
 極限にまで単純化されたこの三原則、中国を理解する助けになります。